【※下記の文章は全て2000年当時のものです。現在の状況とは違っている内容も含まれます。あらかじめご了承ください】
ＩＩＩ 神坂一と恋愛
１．彼女イナイ歴って年齢と同じ？
もう三十代も半分を過ぎた神坂一だが、今も独身である。
もちろん離婚歴なんてものはない。
それはまあ、どうでもいいことといえば、どうでもいいことである。
あなたが独身女性で、神坂一が好きで好きでたまらない（作品が、ではなく本人が）というのなら、どうぞ玉の輿を夢見てくださいってな程度である。
しかし、神坂一がこれまでどんな恋愛経験をしてきたかというのは、ファンとしては気にならなくもないところである。
結婚するところまでは行かなかったとしても、この年齢になるまでには恋物語のひとつやふたつくらいはあったはずだ。
ところが、神坂一は「全くそんな経験はない」というのである。
初めてその話をしたとき、思わず聞き返した私に、神坂一は重ねてきっぱりと言った。
「女の子とつきあったことは一度もない」と。
もちろんお約束で、実は男が好きっていうんじゃないですよねとか、やっぱりネコとラヴラヴなんですかとかベタなツッコミを入れるのは忘れなかったが、どうやら人間の女性と交際したことがないというのは本当のことらしいのだ。（もちろん事実を隠している可能性が全くないわけではないが）
ということは、お金あるし実は風俗店に通ってるとか……と訊いてみたが、「そーいうお店に行ったこともない」とのお返事。
そういえば、「東京に行ったとき某作家先生に連れられて一度だけキャバクラみたいな店へ飲みに行ったことはあるが、このお姉ちゃん心の中では何考えてるんだろうとか、この酒代でＭＴＧが何パック買えるな、などと考えてしまい、楽しいとは思わなかった」という話を聞いた記憶もある。
こーゆータイプの男性は自ら風俗店に行くことはまずない。
しかしそうすると、日帰りクエスト２巻のあとがきで、保護した子猫のために避妊具で即席のほ乳ビンを作る話があったが、つまりあれは子猫のためだけにわざわざ避妊具を買いに行ったということに……うむむ、やるな、神坂一。
神坂一の恋愛経験そのものを追求するのは、このへんで打ち止めにしておくことにして（汗）、そのことが作品にもたらす影響について考えてみたい。
まだスレイヤーズ第二部が始まっていなかった頃、当時の『めが・ぶら』女性スタッフ一同による座談会が行われた中で、こんな声があった。
「リナとガウリイの仲がほとんど進展しないのは、神坂先生自身の恋愛経験のなさが影響しているのではないだろうか」
これだけ聞くと、反論もあるだろう。
実際に、恋愛小説やエロ小説を多数書いている人が恋愛経験豊富かというと、そうとは限らないはずだ。
しかし、何事においても、作者自身に経験があるのとないのとでは、意識的・無意識的に関わらず描写のリアリティに差が出る可能性は高い。
ここで誤解してはいけないのは、作者の経験に基づいたリアリティのある描写が読者にウケるとは限らないということである。
もし、作者の恋愛経験が作品に何らかの影響を及ぼすことがあるならば、これから神坂一に恋人が現れるかどうかは、ファンとしては作品の内容に関わる重要な要素になり得るのだ。
さらに、神坂一が結婚することになったとしたら、もっと大変である。
神坂一はこれまで十年以上気ままな一人暮らしをしてきた。
結婚して生活サイクルが変わった場合、そのことで作品に出る環境的影響はもはや予測不能の域だ。
そう考えると、我々は今後も神坂一の女性関係について注意しておく必要があるような気がしてくるが、実際のところ神坂一が特定の女性と交際を始める可能性はきわめて低く、作品のファンが心配する必要はないと言っていいだろう。
２．作家とファンのスタンス
それにしても、なぜ神坂一にはこれまで女性と交際する機会がなかったのだろうか。
まず本人の性格が超のつくオクテであることが考えられる。
好きな女性ができても、いつも告白できないままに終わってしまうのだ。
これは少なからず真実だと思われる。
だが、これで機会は半分以上失っているとしても、女性の方から神坂一に近寄ってくるということも全くないというのだろうか。
まず客観的に外見を見てみよう。
うーん……ハンサムではないかもしれないが、人と話すときはよく笑い親しみの持てるタイプである。
体躯は、少しだけ余分な肉が付いてるかもしれないが、まあ中肉中背と言っても問題はないだろう。
服装も、おしゃれとまでは言えないだろうが、身だしなみはきちんとしているし、タバコも吸わないし酒もほとんど飲まず、清潔感も問題ない。
つまり、外見だけで異性を引きつける魅力はないが、一緒にいても嫌じゃないタイプであることは確かだ。
となると、内面的にどうかということになるが、周知の通り神坂一はかなり『いい人』である。
面識のないファンにもその『いい人』ぶりは充分に伝わっていると思うが、直接会って話をすれば、さらにそれを実感できる。
会話も楽しい。
神坂一と話をしていてもつまらないという人を、私は一人も知らない。
一緒にいて楽しいというのは、非常にポイントが高い。
そして、なにより経済的には全く問題がない。
本やゲーム、トレカにいくら金をつぎ込んでいても、株や不動産には手を出していないはずなので、四年連続で長者番付作家部門上位ランクインのこれまでの収入だけでも、充分に余生を遊んで暮らせる経済的余裕があるはずだ。
こうしてみると、交際相手としての条件は平均よりはプラスであるのは間違いなく、「いい友達」レベルにも簡単になれると思われることから、それ以上の関係に進展していないのは神坂一の意識の問題である気がしてくる。
私が知っているだけでも、「神坂先生と結婚したい」という女性ファンは数人いた。
その気にさえなれば、ファンの女性と交際することはできるはずだ。
作家の奥さんが、もともとはその作品のファンの一人であったケースは少なくない。
例えば神坂一が敬愛する作家の一人である火浦功先生も、奥さんは元ファンだったらしい。
プロ作家としてファンを大事にするのは当然のことだが、特に神坂一はファンと対等の目線で話そうという意識が強い。
たとえ相手が年下のファンであっても「ですます」調で会話するし、顔なじみとなったファンとは完全に対等の「ボケ＆ツッコミ」の間が成立するくらいで、同級生の「友だち」と話しているかのような親しみがある。
しかし、神坂一は自分なりに作家とファンとしての一線を設定していて、その線を越えることはない。
具体的に言えば、十年近くＦＣ会長としてやってきて、直接会った時や電話では普通に雑談し、たまにはちょっとしたオフレコ話も聞かせてもらえるような、おそらくファンの中では最も親しいはずの私でも、神坂一の本名や直接の住所・電話番号は教えてもらっていないし、アシスタント的な仕事（年賀状用の住所管理とか、アンケートの集計など）の声がかかったことも一度もない。
つまり、作家とファンという関係だから偉そうにするということは全くなく、ファンとも友だちに接するときと同様に対等の目線に立ってつきあうが、あくまで立場は作家とファンであって友だちではない、ということだろう。
このことからも、神坂一がファンに手を出す、という可能性はきわめてゼロに近いと思われる。
３．ネコピョォォォォォォォォン
前項で考えてみたように、神坂一が女性と交際経験がないというのは、神坂一の意識の問題であるのは間違いないだろう。
神坂一自身が女性との交際を望めば、そのチャンスは少なからずあるはずなのだ。
ではなぜ神坂一は望まないのだろうか。
金に不自由もなく、料理も趣味のひとつである神坂一は、今の気ままな独身生活で満足しているからというのが普通の解釈であり、神坂一本人も結婚しない理由としてそう語っているが……
はたして本当にそれだけなのだろうか。
いや、きっと他にも理由があるに違いない。
そーだそーだそー決めた。
そう、全ての神坂ファンも納得のするであろう『本当の理由』、
神坂一の究極の真実。
それは、「神坂一は人間の女性よりもネコの方がラヴラヴ」だからに違いない！
おお、納得。みんな納得。
ここまで長々と、論理的なよーでそーでなく、実際の本人の言動から推論だけで好き勝手書いてきた文章を読んで半信半疑だった人も、この一行で全て納得。
もはや神坂一本人がいくら「俺はノーマルだあっ！ そーゆー相手は人間の女性の方が良いんだぁぁぁぁぁっ！」と力説したところで（実際よくそう叫んでいるが）、ファンの多くは「神坂一は人間の女性よりもネコの方がラヴラヴ」説の方が納得なのである。
それに本人もよく「ネコになら、ひっかかれてもへーき」とか「神坂一からネコを取り上げたら死んでしまうかも」とか言っているのである。
そもそも、「人間の女性の方が良い」とは言っても、「人間でなきゃダメ」とは言っていないではないか！
というわけで、神坂一が最も愛情をそそいでいる対象が猫だというのは間違いのない事実として認識していいだろう。
ちなみに、アニメファンや、ギャルゲーマーの男性の萌え属性のひとつとして存在する『ネコミミ娘』だが、本物耳の半獣半人な猫娘も、アクセサリーとして付けているコスプレ娘も、神坂一にとっては女性の魅力のプラス要素にはなりえないらしい。
やはり神坂一は完全なる『猫』がお好みなようだ。
それでは、最後に神坂一と猫について、ファンの間で噂されている話をいくつかあげておこう。
★神坂一の自宅がある大阪某市内や大阪城公園近辺のノラネコの八割以上は神坂一によって餌付けされていて、神坂一の姿を見かけると集まってくる。
★神坂一が散歩中に出会ったノラネコは全て神坂一によって名前が付けられていて、神坂一には完全に見分けができる。
★神坂一は近所の猫の集会には必ず参加していて、集会のある日は絶対に編集者との打ち合わせなどの予定を入れることはない。
★神坂一は実は非公式に猫と結婚している。
★神坂一には愛人ならぬ愛猫が数十匹いて、印税収入の半分近くは猫の餌代などに消えている。
……どれも信憑性の高そうな噂ばかりである。
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